3. 第8回公募で確認したい3つの変更点
変更点1 生産性と給与の基準年度は補助事業の完了年度
第8回公募では、労働生産性と1人当たり給与支給総額の「基準年度」は、補助事業が完了した日を含む事業年度です。設備を導入し終えた年度を、今後の成長率を比較する起点にします。第7回の、応募申請時の直近決算期を基準とする考え方とは異なります。
補助事業の完了年度の翌年度を1年目として、3~5年間の事業計画を作成します。基本要件は次の4つです。
■労働生産性:計画期間の各年において、基準年度からの年平均成長率4.0%以上を目指す。労働生産性は、働く人1人当たりが生み出す付加価値の指標です。
■1人当たり給与支給総額:計画最終年度に、基準年度から年平均3.5%以上増やす。3.5%以上の範囲で自社が設定した目標率を達成する必要があります。
■事業場内最低賃金:計画期間中、毎年、事業を実施する都道府県の最低賃金+30円以上とする。最低賃金引き上げ特例を適用する事業者には、この要件を適用しません。
■従業員21人以上の場合:仕事と子育ての両立を支援する一般事業主行動計画を、交付申請までに「両立支援のひろば」で公表する。
給与の目標は、交付申請までに従業員等へ表明し、所定の表明書を提出します。行動計画の公表にも時間がかかるため、必要な手続きを申請準備の段階から確認しておきましょう。
1人当たり給与支給総額は、会社全体の給与総額を増やせばよいという条件ではありません。各事業年度の全月分の給与等の支給を受けた従業員を対象とし、中途採用や退職で全月分の支給を受けていない従業員は、その年度の計算対象から除きます。対象者と給与の範囲を、公募要領に従って確認してください。
目標によって返還のルールは異なる
労働生産性の目標を達成できなかったことだけを理由に、直ちに全額返還となる制度ではありません。一方、給与、事業場内最低賃金、大幅賃上げ特例には、未達時の返還に関する規定があります。
1人当たり給与支給総額の目標が未達の場合は、計画最終年度の達成率に応じて返還が求められます。例えば、自社で年平均4%を目標とした場合は、3.5%を超えていても4%に届かなければ未達となります。年平均成長率が0またはマイナスの場合には、全額返還の規定があります。
事業場内最低賃金の要件は、補助事業完了年度の翌年度以降、計画期間中の毎年3月末時点で確認されます。未達の場合は、補助金額を事業計画年数で割った額の返還が求められます。大幅賃上げ特例の条件が未達の場合には、上限額の引き上げにより受け取った部分の返還が必要となり、基本要件も未達であれば、その返還ルールも適用されます。
給与や最低賃金の返還には、付加価値額と営業利益の状況、天災などに関する免除規定もあります。ただし、要件ごとに条件が異なるため、無条件に免除されるものではありません。申請時に高すぎる目標を掲げず、実行できる数値と報告体制を確認することが大切です。
変更点2 設備導入までの足下の賃上げも評価される
「足下の賃上げ」とは、応募申請時の直近決算期から、補助事業が完了した日を含む基準年度までの賃上げです。設備導入後の3~5年間の賃上げとは、確認する期間が異なります。
この期間の1人当たり給与支給総額について、年平均成長率が物価上昇率を上回る程度の賃上げを達成しない計画は、審査上大幅に不利となることが示されています。設備導入による利益が出るまで賃上げを待つ計画ではなく、導入までの期間も含めて待遇改善を検討する必要があります。
2026年10月8日更新の応募申請の手引きでは、参考値として2025年の消費者物価指数の総合指数の前年比3.2%が示されています。これは、全国一律の固定した義務率を3.2%と定めたものではありません。
この目標は、採択後から交付決定までに従業員等へ文書で表明することが必須です。補助事業期間中の賃上げ実績も確認されます。やむを得ない事情で足下の賃上げ目標を達成できなかった場合には、その未達による返還義務は生じませんが、必要な表明などの手続きを行わなかった場合は、交付決定の取消し等につながることがあります。
変更点3 事業を完了する期限が17か月以内に短縮
第8回公募では、補助事業の実施期間は「交付決定日から17か月以内」、かつ「採択発表日から19か月後の日まで」です。第7回の18か月・20か月から、それぞれ1か月短くなっています。
この期間内に、契約・発注、納品、検収、支払いなどを完了し、実績報告書を提出する必要があります。オーダーメイド設備、大規模なシステム開発、海外製品などは納期が長くなることがあるため、申請前に仕様、納期、導入スケジュールを確認してください。この段階での相談や見積もりと、交付決定後に行う契約・発注は分けて進めます。
4. 過去の採択状況と事業計画を作る際のポイント
第1回から第6回までの合計採択率は約65.6%
公式に公表されている第1回~第6回の結果を合計すると、申請件数は11,720件、採択件数は7,684件です。採択件数を申請件数で割った合計採択率は約65.6%となります。
出典:事務局の採択結果 第1回~第6回を合算して算出
この数値は過去の結果であり、第8回の採択確率を示すものではありません。公募回や審査基準、申請者の計画内容が異なるため、採択率だけで判断せず、今回の審査項目に沿って自社の投資計画を整理しましょう。
汎用設備を1台買うだけでは一般型の対象にならない
一般型では、オーダーメイド性のない汎用設備やパッケージソフトを単体で導入するだけの事業は、補助対象になりません。
汎用設備でも、自社の導入環境に応じて周辺機器、機器の数、搭載機能などが変わる場合や、複数の設備を組み合わせることで、より高い省力化効果や付加価値を生み出す場合は対象となり得ます。
ただし、工程を見直すと説明するだけで、オーダーメイド性のない汎用設備1台の購入が対象になるわけではありません。導入する設備の構成・機能と、自社の業務に合わせた設計内容を具体的に示す必要があります。カタログ掲載製品をそのまま導入する場合は、カタログ注文型の利用も確認してください。
省力化効果は作業時間と改善後の使い道で説明する
例えば、製造現場の梱包工程に月150時間かかり、設備導入後に月40時間となるモデルケースでは、月110時間、年間1,320時間の削減が見込めます。これは説明のための仮定であり、自社の計画では実際の作業記録や設備仕様を使って見積もります。
削減時間に加えて、空いた時間や人材を営業、新商品開発、生産量の増加などにどう振り向けるかを示すと、投資による経営効果が伝わりやすくなります。作業時間が減っただけで、売上や利益が自動的に増えるわけではないため、改善後の業務までつなげて説明しましょう。
事業計画では、省力化指数、投資回収期間、付加価値額、設備の設計内容、実行体制、資金調達、収益性、賃上げなどが確認されます。設備の価格だけでなく、現状の課題、改善内容、数値の根拠を一貫して整理することが重要です。